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長澤幸太騎手が帰ってきました。
ひとまわりも、ふたまわりも、大きくなって。
長澤幸太。1988年9月19日生まれの21歳。浜中町出身。
おじいちゃんが馬主だったから、小さい頃から馬に親しんでいて、
将来の夢がばんえいの騎手でした。
中学校、高校の夏休みを利用して、服部厩舎にお手伝いで入り、
早速、草ばんばで騎手の頭角を現しています。
高校を卒業して、すぐにばんえいの厩務員として働き始め、
今年の1月10日、ついに小さい頃からの夢であった、騎手デビューを果たしました。
所属している服部厩舎の応援もあり、新人騎手なのに騎乗回数も多い。
そして、素質がいいから、次々に勝っていく。
周りからの期待も大きく、イケメンだし、マスコミの取材も殺到。
新人でこれだけ注目も騎乗も多いと、周囲からうらやましがられますが、
長澤騎手は、いつも笑顔で物腰やわらかく、誰にでも好かれる性格で、
鼻にかけることもないので、上のジョッキーからもかわいがられています。
重賞レースも騎乗し、今年の地方競馬の新人賞も夢ではない!そう言われていました。
6月16日、デビューから半年もたたないうちに、通算50勝をあっという間に挙げました。
本当に快挙です!
50勝を挙げたとき、ばんえい騎手は第一の壁にぶち当たると言われています。
出走表についている“☆”が消えるのです。
通算50勝までは、ハンデとして10kg重量を軽くしてもらえる、いわゆる新人の特権がありました。
特権がなくなることは試練です。騎乗回数が減ったり、ハンデがないぶんトップジョッキーと同じ条件で騎乗することになるからです。
今活躍している、トップジョッキーも、ほとんどこの壁で苦しんだそうです。
実際、長澤騎手も、“☆”が消えた6月20日から6日間、合計25騎乗しましたが、
一勝もしておりませんでした。
次のステップに進む洗礼なのでしょうか。
騎乗回数も、少し減ってきているかな、とも感じました。
そして、怪我をしました。
馬にガッツと、前足で顔をやられてしまいました。
ほほ、鼻、前歯、あご。
厩舎作業中だったそうです。
決して油断していたわけではなく、不可抗力だったそうです。
重症です。一瞬意識がなくなりました。
すぐさま、入院。大手術を行いました。
50勝の壁と、大怪我。
この3週間は彼にとって、長く辛い日だったのではないのかな。
3週間入院し、本日2009年7月18日、復帰。
「長澤騎手、おかえり!」を控え室で声をかけました。
「あ、どうも。どうも。」と目を伏せて答えてくれました。
そして、復帰2戦目第5レース。
接戦を見事物にして、勝利を勝ち取りました。
偶然なのか、運命なのか。
長澤騎手、初出走、初勝利を飾ってくれてのが、リアルスペシャル号。
50勝の壁を破ってくれ、大怪我からの復帰を飾ってくれたのも、リアルスペシャル号。
初勝利の日は、雪でした。復帰戦の今日は、雨でした。
しかも、リアルスペシャル号は、長澤騎手初出走初勝利を飾ってくれた1月10日から、今日まで一度も勝っていませんでした。
5レースの終了直後、仕事上の原稿を書くため、長澤騎手に話しかけました。
(半分、号泣気味。。仕事になっていなかったかも。。)
リアルスペシャルの偶然性を伝えて、おめでとうと声をかけて。
長澤騎手は、しばらく沈黙。そして、真顔で、まっすぐこっちを見て。
「馬に乗れて、本当に楽しい」
病院の屋上から競馬場が見えたそうです。レースを見て「あぁー!」と声にならない声で叫んで。
階段を駆け上ったり、ダンベル持ったり、筋トレは欠かさずしていたそう。
馬に乗りたくて、乗りたくて。そして、きっともどかしくって。
そして、最後に、
「どう、この傷。目の下やられて、頬骨上げて。ハンサムが台無しでしょう?」
生々しい傷口をさすりながら、でも久しぶりに見た、少し恥ずかしそうに笑った長澤くんの顔は
前よりも、ずっとずっとかっこ良く、何かが吹っ切れた感じがしました。
競馬場の中にはたくさんのドラマを持った人がたくさんいます。
「馬に蹴られて鼻がまがっているから、取材はお断りだよ~」と言いながら、ばんえいのため、こころよく取材に協力してくれる調教師、
馬から落ちて、ずっと怪我と闘いながらも記録を樹立した騎手、
「本当は騎手になりたかったんだけどね。」と、馬で怪我をして握れなくなった手を見せてくれ、今では強いオープン馬を次々輩出している調教師、
「10年は満足に騎乗できなかった。昨年くらいからこんなに乗れるようになったんだよ」と、少ないチャンスをものにして、今では重賞レースを優勝している騎手、
「俺の顔見ると、子供たちが泣くんだよ。」と笑いながら、夜明けから朝8時まで調教して、その足でリッキーやミルキーを幼稚園に連れて行ってくれる調教師。
おおげさじゃないくらい、みんなとても苦労して、今も頑張っている。
馬が好きで、ばんえいが大好きで。
屈託のない笑顔で話しかけてくれる調教師や騎手や厩務員。
だから、私はばんえいが好きなのかもしれないです。
ちなみに、長澤騎手の話にもどりますが、次の第6レース。
長澤騎手が一番早く障害をおり、途中まで独走状態でした。
神様は、彼に2連続勝利を与えるのか!?と思っていたとき、
同期の菊池騎手がつつつーーと伸びてきて、最後の最後で差しました。
(長澤騎手は3着)
なんだか、ばんえい十勝、これからもっとおもしろくなる、
そんな予感がした一日でした。(nao)